『蟲師』

世間の元気が苦しいときがあります。

そんな時に味わえるもの。

読むのも辛いときにはDVDも。

これだけは鬱のときでも観ることができました。

話を聞いていると、わたしだけではないようです。

 

『蟲師』 漆原友紀 講談社

 

書籍もDVDも流れている時間がゆったりしていて、とても静か。

そして内容が、キレイゴトではない。けれども偽悪的でもない。

とてもフラット。

 

江戸末期から明治くらいの架空の日本を舞台に、蟲と人とのかかわりが丹念に描かれています。

主人公のギンコは片目の男。「下等で奇怪。みなれた動植物とはまるで違う」、「蟲」と呼ばれる存在に憑かれやすい体質で定住することができません。そして人に害をなす「蟲」の退治を生業にしています。彼の左目を奪ったのも「蟲」。

 

けれどもギンコは「蟲」を否定しない。そしてむやみには退治しない。

蟲には蟲の理があり、人には人の理がある。時にルールを曲げてまで共存のあり方を模索する。

 

蟲につかれて破滅するものもあり、蟲とともに生きることを選ぶものもあり、蟲に魅入られて人を捨てるものもあり、人に殺されかけて蟲に救われたものあり、人のために短絡的に蟲を利用して取り返しのつかない事態を引き起こすものあり・・・

 

ありのままの存在をありのままに見る。

正中を射抜く深さに幾度も泣かされ、そして救われた作品です。

もちろん、元気なときに読んでも珠玉の作品集。

 

アニメ版の「光酒」という「蟲」の美しさはえもいえぬ感じでしたね~。

地に流れる光脈筋、生命の源の河。